やりなおし高校日本史

高校で日本史の教鞭をとる筆者が、高校の日本史の教科書に載っている事項、単なる歴史上の出来事として年号やイベントを覚えるのではなく、その歴史的な意義が何であったのかを紐解くものとして、何故そのようなことになったのか、周辺で何が起きていたのか、諸外国との関係性も踏まえて解説し、単なる受験科目としてではなく、一個人の関心事として日本史を好きになって欲しと願う。

やりなおし高校日本史 (ちくま新書) [ 野澤 道生 ]
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1時間目は、ヤマト政権の時代における、隋や朝鮮半島との関係において、厩戸皇子が隋に対等関係を宣言してを怒らたり、藤原鎌足と中大兄皇子が蘇我入鹿を倒して政権を奪ったという乙巳の変から始まる大化の改新等を経て律令国家として日本と名乗るまでを解説します。

2時間目は、奈良時代における藤原氏の台頭について、ふなっしーもなんども、の語呂合わせで、藤原不比等、長屋王、藤原四子、橘諸兄、藤原仲麻呂、道鏡、藤原百川までの政権の順番を示し、四子(武智麻呂、房前、宇合、麻呂)が逆境の中で努力して議政官なったことを讃え、非業の死を遂げた仲麻呂の無念に思いを寄せます

3時間目は、平安時代初期のこととして、嵯峨天皇の存在感について取り上げ、後の国風文化の前提となった唐風への傾倒に触れ、同時期に取り上げられる最澄や空海の活躍にも遡って、仏教文化が浸透して、神仏習合が起こっていたことの他、小野篁が地獄の冥官であったと評される程の切れ者ぶりを紹介します。

4時間目は、平安時代中期における、摂関政治について解説するあたり、サザエさん一家を例に外戚の影響を説明し、負名体制を具体的捉えるために、教師による教室の運営に例えて聞かせます。

5時間目は、平安時代後期の白河、鳥羽、後白河の三代の院政の期間について取りあげ、それまでの外戚の影響を受けてきた体制と異なり、上皇が天皇家の後見役として専制的に支配し、知行国制が財政基盤となっていたとし、保元・平治の乱によって平氏の力が強くなり地頭を設置し日宋貿易を行います。

6時間目は、鎌倉時代が成立するまでの過程を整理しながら、かつては征夷大将軍に任ぜられた年にちなんで1192イイクニ作ろうとしていたが、最近では平氏が滅亡し後白河法皇に諸権利を認めさせた1185イイハコ作ろうが用いられるようになってきたとし、承久の乱を経て執権となった北条が、御成敗式目によって公平に幕府を運営するものの、蒙古襲来以降は御家人の困窮を解決できず支配が弱まります。

7時間目は、幕府が弱体化し政情不安だった室町時代で、武家と公家、地方と中央の文化が交流し、金閣寺や銀閣寺などの建築や、能、狂言などの芸能が発展する一方で、幕閣の権力争いや有力守護の家督相続の絡んだ応仁の乱がおこりますが、日野富子が財力で収めます。

8時間目は、秀吉の治めていた安土・桃山時代の太閤検地による税制の変化によって、支配構造も変化し、刀狩りによる兵農分離がもたらした士農工商の身分制度の始まりを見た後、華やかな桃山文化にあって、利休の侘茶の異質さを指摘し、秀吉への批判精神を体現する様をを説きます。

9時間目は、江戸時代前半の元禄の頃が、現代同様に弱者への関心が薄く、路上に倒れた人をも助けず、多くの遺体が並ぶようなすさんだ社会であったと紹介し、5代将軍綱吉が生類憐れみの令によって弱者救済を進めていたことが、ドイツの研究者によって発見されたとして、犬公方と揶揄されてきた綱吉の評価が変わります。

10時間目は、江戸時代後半として、江戸の三大改革と呼ばれる、享保、寛政、天保の改革の内の、寛政、天保の改革の頃を取り上げ、松平定信と水野忠邦が、国内の財政状況への対処に追われる一方で、西欧列強との緊張に対しても難しい舵取りをしてきたことを解説します。

11時間目は、明治時代の政治成果として、大久保利通の暗殺の後、大隈重信と伊藤博文が対立しながらも、憲法制定、国会開設を果たすことて、ようやく不平等条約の改正に乗り出すものの、交渉は難航し、20年かけて領事裁判権を撤廃し、40年かけて関税自主権を回復したことを解説します。

12時間目は、大正・昭和時代前半の政党政治が確立するまでの過程として、桂太郎の構想から立憲同志会につながり、立憲政友党に並ぶ二大政党が立ち上がった後、恐慌や海軍軍縮条約、五・一五事件や二・二六事件などの各種の歴史的事件の周辺で、与野党機能して良くも悪くも、目まぐるしく政権交代が起きる様子を見ながら、日本の民主化の頂点が浜口雄幸内閣であったとする説に、襟をただします。

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