300人のデザイナーを率いてマツダのコンセプトを示し体現する、同社のデザイン部門のトップが、デザインの本質を語ると共に、組織人として生きてきた軌跡を追いながら、リーダーシップの一つのあるべき姿を示しつつ、日本のクルマや、ものづくりの目指すべき方向性と、マツダの未来を語る。
第1章では、マツダの新たなビジョンとして、艶と凛によるデザインコンセプトの発表を控えて、東洋工業時代に現マツダに入社し、フォードの傘下を経て、再び独立したマツダで、デザイナー集団のトップに就任するまでを思い返します。
第2章では、就任半年で部下に総スカンを喰らい、どん底の中で、イメージの言語化に取り組み、そもそもマツダが何を作ろうとしているのかを再定義せざるを得なくなり、長い産みの苦しみの期間を経て、「魂動」という言葉にたどり着き、ビジョンカーSINARIを発表します。
第3章では、デザインを通じてマツダというブランドの価値を上げようと画策し、あえて市場調査の廃止によってデザインの主権を獲得し、SHINARIをベースに巧みにデザインをコントロールしながら、次々と新車種を世に送り出し、ブランドこそが企業経営の頂点と語ります。
第4章では、魂動デザインを通して、社員が感動を共有する機会を増やしていったことで、参画意識を高めることに成功し、自由な社風を作り上げ、ものづくりの現場に自信と活力を与えたようで、章末のコラムで現場の人たちの声を紹介します。
第5章では、日本のものづくりにおいて、機能性や価格、品質の面では海外勢に追い付かれており、デザインへの拘りのなさを嘆きつつ、凛と艶を両極とした、二つのビジョンカーへの思いを語り、今後のマツダ車に期待をかけます。
第6章では、モビリティ化によって、車が個人から分断されていく未来を懸念するが、それでも残るであろう一握りの車好きのために、ガソリン車を作り続け、世界の名車と肩を並べるブランドに引き上げる決意を表明します。
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