60年安保改定において、行政協定が地位協定に改まるときに、占領時と全く変わらない米軍の権利を維持するために、外務省の提案による「合意議事録」なる密約にもとづいて協定が運用されるようになったことが、今日の沖縄の苦難が解消しないことの原因であって、地位協定の改定ができないのであれば、この「合意議事録」を廃棄することを提案している。
第1章では、サンフランシスコ講和条約の締結にあたり、日本の独立性を示しながら、米軍の駐留を保つために、国連の集団安全保障の文脈に頼って日米安全保障条約を別に定めた一方で、占領時と同様の権利行使を求める米軍に対して、行政協定を結ぶに至るまでを述べています。
第2章では、度重なる米軍関係者による重大な犯罪への対応を巡って、国民の不満がうっ積し、条約の存続すら危ぶまれるなかで、条約改定交渉が始まり、無理だと思っていた行政協定の改定が実現するものの、非公表の合意議事録によって、改定前と変わらないことを日本側が提案します。
第3章では、頻発する米軍航空機による事故や騒音問題を巡って、地位協定の解釈、運用の難しさが浮き彫りになる中で、米軍を利するために国内法を変えるという事態を繰り返しているうちに、ベトナムからの撤退を契機に、本土では米軍基地の縮小整理が始まります。
第4章では、沖縄返還交渉にあたり、本土並みを模索する日本と、全島基地方式を要望する米国の要望が折り合うことはなく、ほとんどの基地を沖縄に残したまま、非公開の5.11メモによって、変換前と変わらない基地運用に加えて、巨額の負担をすることになります。
第5章では、沖縄市政権返還にかかる費用の使途と、基地労働者の社会保障費の負担を巡って、思いやり予算の起源と誕生を見た後、ドル高や対日貿易赤字の不均衡是正のために年々対象を拡大、増額してゆく様子と共に、外務省、防衛庁との間の主導権争にも触れます。
第6章では、ドイツとイタリアにおける、駐留米軍やNATO軍との協定について、締結までに自国に有利に働いた様々な状況があったとしても、日本とは異なり、訓練への制限や公平な費用負担、基地の管理権を自国で持ち得たこと等を紹介しつつも、どちらも管轄裁判権は得られていません
第7章では、90年代に地位協定改定を要求する機会が二度あったと指摘し、その理由を考察するとともに、歴代の沖縄県知事による地位協定改定案が、日米両政府によって無視され続けています。
最終章では、そもそも米国側は地位協定の担当者が少なく課題が引き継がれていない可能性があると指摘し、世論が安保条約や日米同盟を支持するする限りは、地位協定改定は不可能と見立てたうえで、「合意議事録」という密約の破棄を提案しています。
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