ハーバード大学で、日本史が熱心に教えられていることに気がついた著者が、何を学び教えているのか、日本が世界に与えた影響、日本の強みと課題、日本が果たすべき役割を探るために、10人の教授へのインタビューし講義風にまとめるかたちで、日本の価値を再発見するもの。
序章では、明治維新後に初めて日本人としてハーバード大学に留学した金子堅太郎を筆頭に、小村寿太郎、松方乙松、山本五十六を紹介した後、ライシャワーが設立した日本研究所と、その人気ぶりに触れています。
第1講義でアンドルー・ゴードンは、第二次世界大戦の敗戦で日本の積極性が失せており、負の歴史を否定せず認める勇気を持ち、品格ある国家を目指すことを提案しています。
第2講義でデビッド・パウエルは、鎖国をしながらも各地では積極的に諸外国と貿易していたことや、明治の日本人の英語力を称賛したうえで、これからの日本人は内向きを改めて、もっとコスモポリタンになれと叱咤します。
第3講義ではアルバート・グレイグが明治維新での近代化への貢献度では、大久保利通と木戸孝允こそが、西郷隆盛や坂本龍馬よりも高いと評価し、内向きと評される現代の日本人は目標を見失っていると指摘します。
第4講義イアン・ジャレッド・ミラーは、環境やエネルギーの視点から見たたときに、一例として九州の炭鉱が沿岸部に近く運搬しやすかったことが近代化を促進した等を述べ、日本の強みが情に厚いことしています。
第5講義では、ジャパン・アズ・ナンバーワンで知られる、エズラ・ヴォーゲルが、当時の米国、アジア諸国の反応を振り返えった後、教育や治安を称賛し、経済面ではなく、環境や平和、貿易分野で世界をリードしてほしいと期待を述べます。
第6講義では、ジェフリー・ジョーンズが、岩崎弥太郎と渋沢栄一を対照的したうえで、資本主義が正当性を失うなかで、渋沢栄一の目指した合本主義が、格差を是正するものと説きます。
第7講義ではサンドラ・サッチャーが、トルーマンの原爆投下の意志決定プロセスの欠陥を指摘したうえで、終戦の詔書に見られる昭和天皇のモラルリーダーシップに触れて、過ちを認める重要性を説いた後、日本の平和主義に期待をかけ世界の良心であることを望みます
第8講義ではテオドル・ベスターが、和食文化の独自性の他、築地市場に働く人びとで形成された、ひとつの社会としての完成度について紹介したうえで、豊洲移転問題を官僚主義的と断じて、豊洲市場の将来を憂いつつ、日本人は内向きを返上して外に出ることを提案しています。
第9講義ではジョセフ・ナイが、軍事や経済からなるハードパワーに対して、政治や文化、国際貢献などのソフトパワーが日本が世界からの信頼を維持するものとする一方で、人口減少に備えて移民政策を見直すことを提案しています。
第10講義ではアルマティア・センが、一人で決めずに皆で相談して決める、という十七条の憲法に日本の民主主義の精神を見ることに始まり、教育熱心である等を論じたうえで、世界に日本が存在することの歓びを伝えて締めくくります。
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