日本人の愛国 (角川新書) [ マーティン・ファクラー ] 価格:990円(税込、送料無料) (2022/3/17時点)楽天で購入 |
歴史、文化、政治、社会、国際情勢といった切り口から、激戦の生き残りの証言や、現場に足を踏み入れた取材の様子を交えて、愛国心とそれを持つこと自体を否定も肯定もせず述べる中で、個人の内面で生じる心の動きを国が押し付けることの不合理や、また愛国心が国に利用され易いことの危険性に釘を刺し、多様化する日本社会は新たなアイデンティティに立脚した新たな愛国心を持つこと提案している。
第1章で筆者は故郷のアトランタが日本人と同じく敗戦を経験したことによって、人々が勝者の歴史観に承服できていない点を指摘しています。
第2章では、神風特攻隊の生還者や遺族らに会い、苦悩の人生に迫るとともに、作戦の無謀ぶりを指摘したうえで、あるべき愛国心の持ち方として、上から押し付けられるようなものではないと断じています。
第3から第4章にかけては、硫黄島やガダルカナルを訪れてますが、激戦の様子を伝えるにとどまらず、いまだ回収されない遺骨の問題を取り上げたうえで、戦争への評価を避けていると指摘しています。
第5章と第6章では、尖閣諸島での漁船衝突事件や東日本大震災で起きた原発事故を潮目として、日本人の愛国心に変化が起こりつつあるとしています。
第7章では、明治政府が取り入れた天皇制から、戦後の天皇皇后両陛下による慰霊の旅を巡り、政府との間にある溝を指摘したうえで、過去の過ちと向き合うことの重要性を説いています。
第8章は、琉球が日本に属すことになってから、悲惨な沖縄戦、米軍統治の後、返還から現代に至っても解決されない基地問題など、沖縄の置かれた特殊な状況に見られる、琉球民族としてのアイデンティティと、日本人としてのアイデンティティの共存に、日本人が新たに持つべき愛国心のヒントがあるとします。
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