共に反米を旨とするロシアと中国は、政治的、経済的、軍事的な側面から協調、連携しており、親密な関係を築いているように見えるが、一方では、とくに中国側の中央アジアへの進出や、北極海への軍事展開等の影響力、勢力圏の拡大に伴って、ロシアは警戒せざるを得ない中で、世界はロシアの期待どおりに多極化の兆しすら見せており、来るべき未来に向けて、日本はビジョンと基礎体力を持てと提案している。
序章では、ソ連解体後のロシアが東側各国の加盟によるNATO勢力拡大に焦り、隣接する中国も米国に抑えられて様々な制約を受ける中で、互いに多極化を目指し親密化しても、共にユーラシア、シルクロードを国際戦略に据え地域的に競合し、時に両国が友好的ではないとします。
第1章では、中露国境問題が解決し、その後クリミアを併合した頃に、ロシアと中国が緊密化し、様々なばで協力関係にあるものの、中国がガス代金の支払いを渋ったりするので、必ずしも良好であるとは言えないということです。
第2章では、プーチンの進めるユーラシア連合構想を取り上げ、重層的に協同体を設置し、旧ソ連諸国との経済的、政治的さらには軍事的な結びつきによって勢力を維持する中で、構想はヨーロッパとアジアの架け橋とする一方で、様々な圧力や工作によって周辺国を取り込もうとします。
第3章では、中国の進める一帯一路構想との連携を図ることによって、ロシアは中国の経済力を便りに、中央アジアのインフラ整備に相乗りし、緒地域の経済は中国、軍事はロシアと線引きしつつ、期待したほどの利益を得られず、逆に中国の勢力拡大への懸念も高まることへの警戒感が払拭できないとし、北極圏を巡っても、ロシアの軍拡や資源開発に触れ、北極圏開発に中国を引き入れておきながら、一方では権益確保し影響力を高める中国へは懸念が残るとします。
第4章では、2013年頃から始まったウクライナ危機によって、国際社会から孤立するロシアが、中国の支持を得ながらも、その影響力は驚異で、ロシアが軍事技術の流出を警戒して技術供与を出し渋ると、中国はウクライナに接近して核の傘を提供するまでになり、また、欧米の経済制裁によって、かえってロシアが経済を強めたとしながら、反米の多極主義によって、中露は付かず離れずを保ちます。
第5章では、ポピュリズムが蔓延し、未承認国家として次々と独立を宣言する国際社会が、西側の影響力を弱め、多極化を目指すロシアにとって好都合な潮流にあって、日本が持つべきは、バランス感覚とブレない政策の他、外交的基礎体力として、防衛、食糧、エネルギー分野の自給を提案します。
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